製作⇒ 田中友幸、菊島隆三
脚本⇒ 黒澤明、菊島隆三
出演⇒ 三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴、司葉子、加東大介、河津清三郎、志村喬
音楽⇒ 佐藤勝
公開⇒ 1961年
日本映画
今回は黒澤明監督の痛快時代劇『用心棒』を紹介します。あのマカロニウエスタン『荒野の用心棒』のオリジナルになる作品だそうで、私は『荒野の用心棒』を見てから随分後になって本作品を見たんですが、確かに大まかな話の筋は同じと言っていいですね。ただ、面白さから言うと私としては『荒野の用心棒』の方が面白かったです。もちろん、それでもこの映画の面白さが失われたわけではありません。
この作品の面白さは、まず、物語として単に善玉と悪玉の対決という単純な話ではなく、ヤクザの2大勢力が牛耳る宿場町で、ふらりと現れた素浪人が両方の勢力に用心棒として売り込みつつ、巧みに相討ちを仕組んでいくという内容で、しかもうまく仕組んだつもりが見破られて袋叩きに遭い、そこから再起して敵を倒すというひねったストーリーにあります。
それから殺陣の場面も、伝統的なチャンバラ映画の様式化した殺陣ではなく、リアルな動きの殺陣を見せているところも見応えのある面白さでしたね。
それについて話が逸れますが、私はテレビの『必殺シリーズ』が好きで、シリーズの初期の作品は面白いと思ってたんですが、後期の作品は殺しの場面が様式化してしまってリアルさがなくなり面白くなくなってしまったということがあります。この『用心棒』にはそういう様式化した殺陣を排除したことで現実的な殺陣の面白さがありましたね。
また、この作品には緊迫した場面だけでなく笑える場面が随所にありますが、これなども後のマカロニウエスタンに影響を与えていると思います。
そしてこの作品の魅力は物語の面白さだけではなく、三船敏郎演じる主人公の素浪人のキャラクターと演技力にもあります。三船敏郎の素浪人役ははまり役でしたね。
マカロニウエスタンにもその他の海外の映画にも影響を与えた黒澤監督は巨匠と呼ぶにふさわしいですし、そしてこの作品は、確かに世界のクロサワと世界のミフネと呼ばれるだけの価値がある映画でした。
評価 ★★★★
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